圧縮記帳の適用範囲に借地権は含まれるのか?

土地の売却に関して「圧縮記帳」という税制上の言葉があります。圧縮記帳は、土地を売った時のテクニックのひとつとして税金の支払いのタイミングを遅らせるもので、利用するのは法人がほとんどです。法人であっても、土地を売却する時に借地権の扱いはどうなるのか気になりますよね。

そこで、圧縮記帳の仕組みと利用する上での注意点をまとめてみました。

圧縮記帳の仕組み

圧縮記帳は、税務上の会計処理のひとつで課税の繰り延べを行うものです。固定資産を購入したり売却したりした場合に、その金額から補助金などの金額を控除して購入価額とする方法で、その年度の税金の負担を軽減する効果があります。

つまり、一時的な所得の増加によって課税されることを繰り延べられるということになります。法人等では、固定資産を取得するにあたり国から補助金などを受けられる場合があります。法人が受け取った補助金は、収入とみなされるため法人税の課税対象となります。

そうなると、法人に残る補助金の金額は実質的には法人税分を除いた金額となり、設備投資などで補助金を受けられたとしても充分な投資ができず、本来の補助金の意味が薄れてしまいます。そこで、圧縮記帳を利用して圧縮損という損失を計上します。

実際には固定資産に毀損が発生しているわけではありませんが、税額を軽減するために経理上の処理で損失を計上するのです。経理上では、補助金は益金として算入され固定資産の圧縮損を同額で計上して損金算入すると、法人税がかかりません。

その結果、国からの補助金は全額固定資産の取得に充てることができます。

圧縮記帳を利用する条件

圧縮記帳の制度は、法人税法上のものと租税特別措置法上のものがあり利用できる条件が定められています。法人税法上の圧縮記帳では、土地建物を交換した時の特例や借地権と底地を交換した時、国庫補助金や工事負担金、保険金などで固定資産を取得した時などが適用されます。

一方、租税特別措置法上のものは、収容等があった時の課税の特例や特定資産を買い換えた時などが適用され、いずれも主に法人に利用されるものです。ただし、特定資産の買い換えは個人間の土地売買にも当てはまります。

圧縮記帳の対象の土地には、土地のほかに借地権が含まれます。また、土地を借りていた借地権者が地主に借地権を返還して、その対価に底地を交換したものは法人税法の第50条によって適用されます。

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固定資産の交換には特例がある

圧縮記帳には固定資産の交換に特例が認められています。特例を受けるには、相互に1年以上所有しているものであることや同じ種類の資産の交換であること、交換差金等の金額が交換資産のいずれか高い方の時価の20%以下であること、交換のために取得した資産でないことなどの条件を満たしている必要があります。

交換差金とは、金銭以外の資産を交換する時に、譲渡する資産と取得する資産の額が同じでない場合に差額を補うためにやりとりされる金銭のことです。圧縮限度額の計算は、交換差金の有無によって異なります。ただし、特例の適用を受けないで譲渡益を計上することもできます。

譲渡益に対する税金の負担を軽くしなければいけない状況であれば、交換特例が有効です。しかし、交換後に用途が変更される可能性があるケースなどの特殊な事情が見込まれるような時は、申告した後になって交換特例が受けられなくなる場合があります。

また、繰越欠損金があり譲渡益が吸収できるような場合にあるときは、将来の減価償却費を確保することや譲渡する時の税金を軽くするといった目的があるのであれば、交換特例を受けないということも視野にいれると良いでしょう。

固定資産を交換したときは、特例を受けるかどうかは選択できるので、交換特例のメリットやデメリットを考慮して選択しましょう。固定資産の交換の特例を受けるには、確定申告書に必要事項を記入して内訳を添付し税務署に提出しなければいけません。

交換差金が発生する場合には所得税の課税対象になり、親族間などで交換した場合は贈与とみなされるケースもあります。交換差金が生じない場合でも、不動産所得税や登録免許税などは発生することも覚えておくと良いですね。

土地売買における圧縮記帳の経理について

土地売買の圧縮記帳の経理方法には「直接減額方式」と「積立金方式」があります。「直接減額方式」は、損金処理によって帳簿の価額を直接減額する方法です。決算が確定する日まで剰余金の処分によって圧縮積立金を積み立てる方法が「積立金方式」です。

日本では取得原価主義という会計方法が取り入れられています。取得原価主義は、資産を評価する時に取得した原価を基準とする方法です。取得原価主義の観点からいえば、圧縮記帳は積立金方式が会計上は望ましいのですが、企業会計原則では、交換や収容等について直接減額方式にできることが規定されています。

ただし、固定資産における圧縮記帳の条件を満たしていることが前提となっているので注意が必要です。

圧縮記帳は免税ではない

圧縮記帳をすると、取得した固定資産の金額が減額されます。

そのため、基本的には圧縮記帳をした年度の次からの減価償却額は、圧縮記帳をしない場合と比較すると少なくなります。つまり、圧縮記帳をした会計年度は圧縮損を計上するので損金の参入額は大きいのですが、その後の減価償却費が少なくなるので、長い目でみれば圧縮損は無いに等しいといえます。

圧縮記帳は一時的な税負担を軽減し、税の負担を繰り延べていることになります。ただし、土地は減価償却されないので圧縮損が無くなってしまうということはありません。しかし、売却する時には圧縮損を計上した金額だけ売却益が大きくなります。

売却益は課税の対象となるため、土地の場合であっても圧縮記帳は税の負担を繰り延べていることには変わりがないといえます。

圧縮記帳で気をつけること

圧縮記帳は、一時的に税金の負担を軽くするというメリットがあります。補助金等を有効に使う時には圧縮記帳の適用は有利といえます。その後の税金を繰り延べるということはメリットでもありますが、支払いのタイミングがずれるというデメリットにも繋がります。

圧縮記帳は適用要件や会計処理が非常に複雑です。メリットやデメリット、仕組みを理解し圧縮記帳後の税金の支払いについても資金繰りをしっかり組む必要があります。